体験する仏教  

ずっと、ずっと求めていたブッダの智慧

願いを叶える秘訣は、願いを腹に落とすこと

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人に酷いことを言われて納得できない時の、怒りの感情をどう表現しますか。「腹が立つ」、「ムカつく」、「頭にくる」、「キレる」とさまざまな表現が思い浮かびます。

この質問を十代の若者にすると、「キレる」という答えが多く返ってきます。これは、少々困ったことだなあ、と思います

怒りを身体の箇所で表すとき、古(いにしえ)の武士は、腹で受け止めました。「殿(との)はご立腹でござる」などと言います。

新渡戸稲造は『武士道』に、日本人は、古来、腹には魂と感情が宿っているという信念を持っていると書いています。切腹をするのは、腹、すなわち魂が宿る場所を切って、汚れているのか清らかであるのかを見てもらうためだと新渡戸は言います。

「腹が座っている」という表現がありますが、怒りを腹で受け止めるとき、人は暴走することはありません。。

怒りを受け止める部位が身体の上に行けば行くほど、人は感情的になります。近年は身体の頂点である頭でも怒りを受け止められず、切れて爆発してしまう人が多くなっているようです。これは若者だけではありません。

先日、八百屋の店頭で、ミカンを手に取って、お金を支払わずに食べようとした男性の高齢者を見かけました。店主が「スミマセン。それは試食用ではありません」と注意すると、その高齢者は「客に文句をつけるのか、この店は」と怒りはじめました。いわゆる「逆切れする暴走老人」です。

最近は「腹のできた人」が少なくなっているようです。腹のできた人は、緊張をして上がることがありません。上がってしまったとき、何が上がっているのかというと、それは身体の重心です。腹のできた人、言い換えれば沈着冷静で何事にも動じない人の重心は、ヘソの下に落ちています。

合気道の達人、藤平光一は、「臍下(ヘソの下)の一点に心をしずめ統一せよ」と言い、平常時にも身体の重心を落として行動することが重要であると説いています。

弱いチンピラが「テメエ、やる気かよ」と言って身構えているとき、だいたいカカトが浮いて、アゴが上がっています。これは重心が上がっている時の姿勢です。姿勢をみれば、ケンカが強いのか弱いのかは、すぐにわかります。

さて、本記事のテーマは「ケンカに勝つ秘訣」ではなく、「願いを叶える秘訣」でした。

願いを成就させようとするとき、普通は頭で願いが叶った状況をイメージし、胸でそれを感じてワクワクします。それでオーケーなのですが、さらにその願いを腹で受け止め、腹に落とすことが願いを叶える秘訣です。

願いを腹に落とすと言うのは、重心をヘソの下に置いた状態で、願いを成就させようと決意し、叶った状況を受け取る覚悟をするということです。

部長に昇進したいと頭で願いつつも、部長となったことで生ずる責任の重さを、胸で不安に感じている人がいました。腹に落とすとは、不安も受け止めて、部長になる覚悟をするということです。

願いを腹に落とすと、おのずと願望成就に向かって力強く動けるようになり、状況はよき方向へと進展していきます。

腹式呼吸は、願いを腹に落とすための、よいトレーニングになります。その仕方については、このブログでも紹介しています。

実は、仏道修行をするにあたっても、仏になろうという願いを腹に落とすことが大切であるのです。

唱題(南無妙法蓮華経を唱える修行)をはじめる方に、わたしは、まず腹式呼吸のしかたと姿勢をお伝えします。その後、唱題が進み、唱題で癒されて平安を得た方には、腹で、仏としての自己に目覚める決意と覚悟をすることの大切さをお伝えしています。