体験する仏教  

ずっと、ずっと求めていたブッダの智慧

物質中心の時代の終焉

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30年ほど前、横浜にある私の実家の近くには小さな森がありました。高校教師をしていた父の幼馴染みは、その森に棲息する生き物の生態を調べて本を著しました。わたし、はそれを読んで「小さな森に、こんなにもたくさんの生き物が棲んでいるのだ」と驚き、感動しました。

この小さな森は、今はもうありません。ある日突然ブルドーザーが入り、あっという間に住宅地になってしまいました。この住宅地を、犬を連れて散歩するとき、わたしは心に痛みを覚えました。

国立環境研究所の五箇公一氏は、現代は史上最悪の絶滅の時代であると述べています。

地球上の陸地の75パーセントは人間によって破壊され、100万種の動植物が絶滅の危機にあると氏は言います。自然破壊、乱獲、汚染、外来種の持ち込みなど、人間の営為がこの危機を生んでいます。

散歩時の私の心の痛みは、人間がこの星の生物多様性を劣化させる営為を続けてきたことに対する痛みであった気がします。

さらに五箇氏は、この人間活動そのものが、地球温暖化を引き起こし、新型コロナウイルスが人間社会で猛威を振るうことになった遠因となっているとも指摘しています。

そうであるとすれば、ウイルスは、物質中心主義、経済至上主義の人間社会崩壊の危機を教えてくれている存在であるとも言えましょう。

コロナ退散、撲滅を祈っている僧侶もいらっしゃいますが、わたしはこれには違和感を覚えます。

いずれにしても、人類は今、大きな転換点に立っていると言って間違いはないでしょう。

今後も経済最優先で、人間以外のいのちを犠牲にして、どこまでも物質的な繁栄を追求していくなら、人類はさらなる大きな困難を経験することになるように思われてなりません。

コロナ後の世界をどうするのか。環境破壊をどのようにストップさせ、経済のあり方をどのよう変えていくのか。その方向性を決めるのは私たちの意識です。コロナを撲滅すればよいという話ではありません。

物質的な繁栄よりも、自然と共生しながら、いのちを慈しんでいくことを最優先する社会。そのような社会を作っていきたいと切に思います。

そのために仏教の慈悲と智慧は大きな力になると、わたしは考えています。