体験する仏教  

ずっと、ずっと求めていたブッダの智慧

ぜひ知っておきたいお地蔵さまの話

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お地蔵さまを知らない日本人というのは、まずいないでしょう。都心部でも街中にお地蔵様が祀られていることがあります。

家内安全や病気平癒などを祈るべきではないお地蔵さまが、身近に在るのを御存じですか。

冒頭の写真は、拙宅の近くに祀られている、小さな可愛らしいお地蔵さまです。その傍らに、このお地蔵さまが建立(こんりゅう)された主旨を記した説明板が立っています。以下はその説明文です。

「昭和20年8月13日、当時の土地所有者のご家族がこの場所で米軍機の機銃掃射で亡くなられました。小学生くらいの男の子さんであったそうです。当時は、戦時中の灯火管制が敷かれており、そのお子さんの部屋だけが明かりが外に漏れていて上空から狙い撃ちされてしまったようです。終戦から二日前のことです。このお地蔵さんはその亡くなられた方をおまつりするためにこの場所に設けさせていただきました」

このように、お地蔵様は、供養(慰霊)を目的として建立されることがあります。このような地蔵尊は、お寺の境内や道端など、誰もが手を合わせることができる場所にあることが多く、供養をしなければならないお地蔵さまに、それと知らずに現世の利益を祈っている人もあるようです。

写真のお地蔵さまにも、説明板をろくに見ずに「我が子が元気に育ちますように」などと祈っている人もいるのではないかと思います。

多くの犠牲者が出た事故現場などに、供養を目的としてお地蔵さまが立っていることがあります。お地蔵さまは、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天の六道に住する全てのたましいを済度する、もっとも慈悲深い御仏(みほとけ)として信仰されてきました。ですから、このような場所にお地蔵さまが立っているのです。

お地蔵さまは子供が大好きな御仏でもいらっしゃいます。それゆれ、亡くなった子どもの供養のために建立されたお地蔵様はたくさんあります。

そういえば、拙宅の近くには、子どもが元気に育つことを願って建立された子育て地蔵もあります。写真の地蔵尊とは異なって、子育て地蔵尊では、我が子が元気に育つように祈ることが、その地蔵尊の喜びとなります。

キリスト教圏の国々と違って、日本人は供養(慰霊)ということを昔から大切にしてきました。事故死あるいは自死した人の供養のために、踏切脇に牛乳瓶などに花が活けられていることがありますが、海外の人の目には、これが不思議に映るようです。

供養が生活の中に息づいている日本にあっては、お地蔵様はもっとも親しみのある仏さまであると言っても良いのではないでしょうか。

写真のお地蔵さまに供養(慰霊)の思いをもって手を合わせていただけましたら嬉しく存じます。